韓国の戒厳令騒動は自民党の「緊急事態条項」案が示す姿
12月3日深夜の臨時ニュースには驚かされた。スワッ、北朝鮮との軍事衝突が始まったか?との不安と疑問がよぎった。韓国尹大統領の「戒厳令発動宣言」は、突然でそう感じさせるものがあった。大統領制をとっている韓国の政治体系は、憲法の規定で国家の危機に際しては、大統領によ る「戒厳令発動」を認めている。もちろん、憲法の趣旨に基づいての話だが.....。
当時の日本国民(帝国臣民)は、この発令になすすべもなく従わざるを得なかった。そして、軍隊によるこのクーデター制圧を機に、日本は軍国主義への道を急速に走り始め、戦争へと突き進んだ。私たちは、この歴史の事実を決して忘れてはならない。
しかし、今度の韓国の「戒厳令」騒動では、韓国市民の対応は素早く、尹大統領の暴挙を瞬く間に潰してしまった。発令からわずか数時間後には大統領に「発令解除」を宣言させたのだ。このことは、韓国国民の「民主主義」に対する強い思い入れがあることを証明するものだ。
韓国は、長い間軍事政権独裁による強圧的政治が続いた。そして、韓国政府は民主主義を求める国民を、光州事件で示されたように弾圧をもって抑え続けてきた。韓国国民は、こうした弾圧をはねのけて今日の「民主主義を」を勝ちとってきたので、「民主主義」に対する思い入れが日本国民よりもはるかに強い。だから、再び「民主主義」が脅かされるのを見逃すことはできないとして、自らが立ち上がり行動を開始したのだと思う。発令後の野党議員や国会職員は、警察や軍隊にも躊躇なく正面から対峙した。多くの市民もすぐに国会に押し寄せた。国会に集合した野党は、即時に「発令解除」の決議をし大統領に解除求めた。
韓国の軍隊(軍人)にも、国民弾圧への戸惑いや躊躇があったのではなかろうか。実弾を装備しなかったとの伝聞もある。惨劇を防げたのは、軍民共に「民主主義への強い思い入れ」があったことの証だと思う。
私たちは、韓国の「戒厳令発令」騒動から教訓を得て、独裁政治を許さないためも「緊急事態条項」の憲法への組み入れを、絶対に阻止しなければならないと思う。組み入れられれば、北朝鮮や中国・ロシアの脅威を理由に、日本も核保有国になりかねない。自公政権が少数与党に転落したとは言え、維新・国民民主の「改憲強硬派」が存在する限り「改憲」の危険は続く。 星 正志-2024年12月